多摩ニュータウンの未来 | 東京ウェッサイ

私は、昨年6月より、多摩ニュータウン学会の会長を勤めています。多摩ニュータウン学会は、1997年に設立された市民学会で、総合的、学際的に多摩ニュータウンについて学習・研究する団体です。市民、大学、企業、行政のパートナーシップにより、新たな地域学を目指しています。このために、研究者、学生はもちろんのこと、ニュータウン地域で生活する一般市民や企業・官庁の方々を始め、多摩ニュータウンに関心をもつ方であれば誰でも自由に参加することができる開かれた学会を目指しています。

私自身は、多摩ニュータウンの住民ではありませんが、職場である首都大学東京の前身である東京都立大学が1991年に南大沢に移転してから、20年以上、多摩ニュータウンに通勤しています。高校の地理の授業中に、同級生による、「自分が住んでいる多摩ニュータウンとシンガポールを比較するといかにシンガポールが素晴らしいか」という発表を聞いて以来、多摩ニュータウンが気になっていたところ、大学の計画演習の対象地となったうえに、職場も移転してくるという、浅からぬ因縁を感じています。

多摩ニュータウンは、最初の入居から40年を経過し、テレビのワイドショーなどでは、オールドタウンと揶揄されます。しかし、これは必ずしも実態を正しく示すものではありません。たとえば、2005年国勢調査による75歳以上人口比率(図)を見れば、多摩ニュータウンは周囲に比べてむしろ「若い」住宅地なのです。これを踏まえて多摩ニュータウン学会では、多摩ニュータウンについて様々な研究会やシンポジウムを積み重ねる中で、多摩ニュータウンには様々な課題がある一方で、整備されたインフラや多彩な市民活動など、豊かな地域資源があることを発信し続けてきました。

今、多摩ニュータウンは、諏訪二丁目団地の建替えプロジェクトや、東京都や地元自治体などの円卓会議設置など、大きな転機を迎えています。さらに、負のイメージを払拭するブランディング戦略が必要とされています。これにどのように対応するかが今後の持続的な地域創成の鍵になるでしょう。これを睨みつつ、多摩ニュータウン学会は、地元の多くの市民活動団体とも連携しつつ、活動を続けていこうとしています。

吉川 徹(首都大学東京)

吉川 徹 Yoshikawa Tohru
首都大学東京都市環境学部 教授

東京大学工学部都市工学科卒業、同大学院工学系研究科都市工学専門課程修士課程修了。東京都立大学工学部建築工学科助手、同助教授などを経て、現在、首都大学東京大学院都市環境科学研究科建築学域教授、博士(工学)。生まれてから現在まで国立市民。専門は都市計画、特に地図情報を用いた地域分析、都市解析。著書に、「コンパクトシティ再考:理論的検証から都市像の探求へ」(都市研究叢書2、学芸出版社、2008年、共著、玉川英則編)、「長く暮らすためのマンションの選び方・育て方」(彰国社、2008年、共著、日本建築学会編)、「GISで空間分析」(古今書院、2006年、共著、岡部篤行・村山祐司編)。

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2012/05/11 05:24

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2012/03/09 15:39