ご近所付き合いをデザインする | 東京ウェッサイ

みなさんは、今住んでいる場所の周りにどんな方々が住んでいるかご存知でしょうか？

次々と建つマンションなど現在の都心の住まいは、市場原理やマーケットを意識するあまり、セキュリティーやプライバシーを意識し、とても閉鎖的な住環境となっています。
私が以前住んでいたマンションでは、なるべく顔を合わせないようにするのが暗黙の了解のようになっており、どこか気持ちの悪い思いをしながら生活していました。

家を建て、ある場所に住むことはその場所に根をはり、地域に住まうということであると思います。
つまり、その地域の人々との関係はとても重要なものとなります。
今回のいえつくのPJは　初めは単に私の住宅の設計でした。　しかし、そこから、家づくりに潜む、都市的なテーマについて議論と実践を重ねてきました。ここでは、その一部をご紹介いたします。

3.11を機に、世の中に今、地域コミュニティという言葉をよく耳にするようになりました。今回私のいえづくりを通して、いえつくで描こうとしたものはまさに地域コミュニティに近いものです。

これはテーマがテーマだけに一朝一夕に答えが出るような類の活動ではありません。プロジェクト全体は7、8年を目途に計画しています。今回ここでお話するのは最初の1年半、住宅の設計・建設中の期間としたフェーズ1です。　このフェース1が、タイトルにある「ご近所づきあいをデザインする」です。

プロジェクトの敷地は、西荻駅近くにある路地の中です。住宅街ですが飲食店やアトリエ、美容室などがあり、様々な世代やタイプの方が住まう不思議な路地です。
「フェーズ1」では家づくりを通してどうしても避けることのできない、工事中の騒音や通行止めなど、周囲の方に迷惑をかけるマイナスの状況を、デザインを通して、逆にご近所付き合いのきっかけにしてしまおうという作戦でした。この『ご近所付き合いをデザインする』では、一つ一つは小さなことですが、9つの試みをしてきました。そして、住宅が竣工した際には、すでにそこに住んでいたかのような関係がご近所の方々と築けることを目指し、プロジェクトを進めてきました。

現在、私は既に引越しを済ませ、ここで生活をはじめ、2ヶ月ほどがたとうとしています。
9つの小さな試みの甲斐もあってか、ご近所の多くの方とすでに良好な関係を築くことができています。挨拶はもちろん、ご近所へおすそ分けもあったり、世間話にも花がさきますし、先日は一緒に近所の方と餅つきをしたりしています。全て、昔は普通にあったことであり特筆すべきことではないと思いますが、いえつくで実践したクリエイティブ活動を通して得られた確かな成果を私は実感しています。住み始めてから徐々に築かれていくだろうと思っていた関係が、すでにそこにはあります。これから、ご近所の方々とどのような関係築き、共に生活していけるか楽しみです。
今回のプロジェクトが、多くの人にとって、地域に住むということについて考える一つのきっかけとなればと思っています。