今年5月に故・山本作兵衛さんの『炭坑画』が、ユネスコの記憶遺産に国内で初めて登録され、改めて炭鉱の歴史が見直されています。
1981年10月16日の起きた北海道夕張市の北炭夕張新炭鉱でのガス突出事故から、今月30年が経ちました。私はこの事故の撮影を契機に、全国の炭鉱や鉱山跡を訪ねて写真を撮ってきました。
明治の近代化や戦後復興に大いに貢献した炭鉱・鉱山(ヤマ)は現在はほとんどが閉山しています。かつて人々が生活し、活気にあふれていた街はなくなり、今は自然に還り、地図上から消えた所もあります。
沖縄県・西表島に残された宇多良炭鉱の遺構は、マングローブが大蛇のような根を下ろし、まるで古代遺跡のようでした。
また、かつて東洋一といわれた岩手県・松尾鉱山には、厳しい風雪に耐えた建物の中に雪が吹き込み、何度似ても魅了される美しさと不思議さに満ちた造形を生み出していました。誰もいなくなった場所ではありますが、そこに生活した人々の営みや、時が重ねられる中での存在を、写真で記録する事で、私は人間を感じています。
今回の写真展の会場は、炭都として栄えた北海道美唄市の小学校の木造校舎を使用したギャラリーで行います。社会を支え、ひとつの時代を終えたヤマに遺された遺構と、人々の営みの痕跡、役目を終えて再びヤマに還るその姿を、『ヤマに在り ヤマへ還る』 展とし、多くの方に見ていただきたいと思います。