「何をデザインするか」をデザインする | 東京ウェッサイ

今回のゲストは、建築家の猪熊純（いのくま・じゅん）さん。デザインとは、形や空間など、見た目を考えるだけではありません。「一つ一つのプロジェクトにとって最も重要なのは、『何をデザインするのか』を、考えることだと思っています。」とは猪熊さんの談。その思いは、付箋・家・集合住宅など、様々なスケールのデザインすべてを貫いています。

「私たちは、付箋をデザインするのに、紙を作るところから考えます。家をデザインするのに、壁が全くない状態から考えます。集合住宅のデザインをするのに、建物の用途そのものから考えます。私たちにとっては、デザインの前提条件もデザインの対象です。 本当に世の中に必要で、様々な人達が喜んでくれるものは、 きっとそういうところから生まれてくると思っています。」

と仰る猪熊さんの手掛けられている現在進行中の3つのプロジェクト（以下記載）を具体例に、「『何をデザインするか』をデザインする」ことについて、たっぷりお話をうかがいたいと思います！

【現在進行中のプロジェクト】
・イエタグ
紙から紙を再生するのではなく、建築廃材を紙として再生すると、それは、再生紙でありながら新品となります。それを実際に作り、プロダクト化したのがイエタグ。家の形をした付箋で、家の記憶を形に残しました。並べると、街並みもできあがります。
ただ、形をデザインするのではなく、新しいマテリアルフローの提案を行い、それでしか出来ない形を、モノに与えました。

・新築シェアハウス
一人暮らしが増える中、余っているのにワンルームばかりが増える状況に対して、シェアハウスの新築を提案しています。シェアハウスには、家族や地縁ではない、ゆるいコミュニティがうまれます。住まい手にとても人気があるだけでなく、事業者にとってもワンルームよりも利益がでる、実に興味深い建物です。
しかし、今までは寮などのリノベーションが主だったため、本当にシェアハウスに相応しい建物は、まだ生まれていません。この新しい流れの中で、今の時代でしかできない住まいを作ろうとしています。

・出雲古民家活用提案
建築家の山代悟さんを中心とするグループで、出雲市平田町の木綿街道にある、築200年以上のたてものの保存と活用提案をしています。木綿街道は500ｍの古い街並みがのこる街道。維持費すら難しい状況のなか、それでも残してゆきたい、という街の人たちの熱意に協力したいと思い、活用の提案をし始めています。
街の人たちが、連携し協力することで成り立つ、今の時代にふさわしい活用を提案しています。昨年はその建物の中でワークショップを行いましたが、今年はさらに長期的な活用提案も行う予定です。

ゲスト：猪熊 純
成瀬・猪熊建築設計事務所　http://www.narukuma.com/